部門・センター

女性泌尿器科・ウロギネセンター

概要・特色

女性特有の病、主に骨盤臓器脱と腹圧性尿失禁を対象とした女性専門外来です。
ウロギネコロジーとは「ウロロジー:urology 泌尿器科」「ギネコロジー:gynecology 産婦人科」という言葉が合わさった造語です。ウロギネセンターは「婦人科」と「泌尿器科」にまたがる分野の疾患に対応する診療科です。
開設後順調に稼働し、平成25年1月9日の中日新聞夕刊で紹介されました。また、骨盤臓器脱の治療相談も平成25年3月19日中日新聞『紙上診察室』に掲載されました。
平成26年2月から、毎月骨盤底筋体操指導教室(6~7名のグループ指導)を開始し、平成27年6月に骨盤底筋体操個別個人指導外来を開設しました。また。平成30年10月から、医師の診察には抵抗があるが専門的なスタッフに相談されたいという方対象に、ウロギネ相談外来を予約制で開始しました。さらに、平成29年1月からは、女性泌尿器科を標榜できるようになったため、女性泌尿器科・ウロギネセンターとなりました。

診療について

尿失禁でお困りの方に、失禁の改善・予防のための骨盤底筋体操指導や皮膚トラブル予防のケアを、専門の知識を持った医師と看護師が行っています。受診希望の患者さんは女性泌尿器科・ウロギネセンターへご連絡ください。

受診方法予約制
予約電話番号TEL. 0570-023100(ナビダイヤル)(女性泌尿器科・ウロギネセンター )
診療日初診:木曜日・金曜日の午後
担当医師成島雅博医師:2回/月、荒木英盛医師:1~2回/月、加藤久美子医師:4回/月

ごあいさつ

センター長の成島雅博です。私は昭和61年7月から女性腹圧性尿失禁治療や膀胱瘤の手術治療にあたり、平成19年4月に新しい手術であるTVM(メッシュ)手術を開始しました。平成20年4月には女性泌尿器科専門外来を開設、さらなる医療サービス向上を図る目的で平成24年6月 1日からウロギネセンターを開設し女性泌尿器科専門外来の機能をウロギネセンターに移行しました。開設理念は、骨盤臓器脱、尿失禁、排尿障害などウロギネコロジーの患者さんに総合的な質の高い医療サービスを提供することです。メンバーは、医師3名、皮膚排泄認定(WOC)看護師1名、理学療法士2名、助産師1名、看護師8名、排尿機能検査士5名、医療支援センター看護師1名、医事事務2名が加わり総勢23名で、患者さんが医師には話しにくいことも気軽に相談できる体制になりました。
令和5年3月31日までに、TVM 手術を1,128症例施行し、さらに新しい手術治療として、平成24年12月から腹腔鏡下に骨盤臓器脱をメッシュで吊り上げる腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)を 1860症例行い、TVM 手術に勝る素晴らしい成績を上げています。
一方、平成26年2月から骨盤底筋体操教室を開設し、平成27年6月から骨盤底筋体操個人指導外来を開設、昨年8月から井上倫恵先生の外来を増設、平成30年4月から常勤の骨盤底筋訓練専門理学療法士渡邊日香里先生が加わり強力になりました。さらに平成30年10月にはウロギネ相談外来を開設しました。
また令和5年4月から、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院女性泌尿器科に勤務されていた加藤久美子先生が当センター常勤医として加わり、更に医療体制が強化されました。
メンバーは骨盤臓器脱、尿失禁、排尿障害などについて専門的な知識を持ち、患者さんが安心して治療を受けられる環境を作っています。

今後、名鉄病院女性泌尿器科・ウロギネセンターを何卒よろしくお願いいたします。

ウロギネセンター紹介記事

診療内容

対象疾患

骨盤臓器脱(子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、腟断端脱)
腹圧性尿失禁(混合性尿失禁)

お産による骨盤内支持組織の裂傷や加齢などが主な原因で、腟口から子宮・膀胱・直腸などが脱出する女性特有の疾患です。骨盤臓器脱は英語ではPelvic Organ Prolapseと言い我々専門医の間ではPOPと呼ばれています。骨盤臓器脱は外陰部違和感・下垂感や排尿困難・頻尿・尿失禁・便秘などの症状を伴うことが多く、入浴時や排便排尿時に腟口にピンポン玉のようなはれもの(腫瘤)をさわり気づかれることが多いようです。

今世紀に入り従来の手術方法に比べ身体への負担が少ない(低侵襲)で再発率の低いメッシュを使用するTVM(transvaginal vaginal mesh)手術がフランスで開発され、平成17年に日本に導入されました。当科では平成19年4月から令和5年3月31日まで1128症例施行し、良好な手術結果を得ています。麻酔は、体に負担の少ない下半身麻酔(脊椎麻酔)で行っていますが、手術中鎮静剤で眠っていただきますので苦痛なく手術が受けられます。入院期間は5~7日間です。子宮筋腫や卵巣良性腫瘍の合併された骨盤臓器脱患者さんに対して、平成24年12月から腹腔鏡下に子宮筋腫や卵巣腫瘍の摘出と同時に骨盤臓器脱をメッシュで吊り上げる腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)を開始しました。
平成26年4月から保険適応となったため、子宮筋腫や卵巣良性腫瘍の合併のない骨盤臓器脱患者さんにも広く行うことができるようになりました。この手術は、腟壁に傷をつけないためTVM手術に比較して性生活への悪影響の心配がないことが特長です。TVM手術が好ましくない50歳以下の患者さんにも適切な手術です。令和5年3月31日までに1860例施行し、現在毎月20~25件行っています。経過は極めて良好で、再発率も低率です。入院期間は7日間です。

TVM手術

手術用の糸と同じ材質の身体になじみやすい素材のポロプロピレン糸を編んだメッシュを下の図のように、膀胱と前腟壁の間(前壁メッシュ:A-TVM)と直腸と後腟壁の間(後壁メッシュ:P-TVM)に腟壁を切開して埋め込む手術(経腟手術)です。膀胱瘤の場合は前壁メッシュだけ、直腸瘤の場合は後壁メッシュだけ埋め込みますが、子宮脱や腟断端脱の場合は前壁メッシュと後壁メッシュ両方を埋め込みます。比較的大きなメッシュを埋め込む手術で、プロリフト型TVM手術といいます。それに対して比較的小さなメッシュを埋め込んで骨盤臓器脱を治す手術方法のエレベート型TVM手術を平成25年11月に導入し、平成26年9月までに166例施行しました。エレベート型TVM手術は、子宮脱に対しても前壁メッシュだけで治療できるため手術時間が短縮しました。さらに、平成26年9月からは、エレベート型 TVM 手術に代わってアップホールド型TVM手術を導入しました。アップホールド型TVM手術は、エレベート型のTVM手術に比較してさらに短時間で行える身体に負担の少ない手術です。令和5年3月までに370例施行しましたが、プロリフト型TVM手術やエレベート型TVM手術に比べて術後疼痛が少なく合併症が少ない素晴らしい手術です。
平成24年12月に開始した腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)が、アップホールド型TVM手術にやや勝る成績であることが判明したため、現在では腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)が主になっていますが、アップホールド型TVM手術は、手術時間が短く、全身麻酔でなく下半身麻酔で行えるといった利点から、高齢の方には大切な選択肢です。

LSC手術・RSC手術

全身麻酔下に腟の壁の裏側にポリプロピレンメッシュのシートを挿入し、このシートに連続した幅2.5cmのテープを仙骨前面に固定し下垂を矯正する腹腔鏡下手術です。メッシュシート挿入のため子宮体部は摘出します。手術時間は約3時間です。経腟的メッシュ手術(TVM手術)に比較して術後の臀部~大腿痛が無いことと性生活により影響の少ないことが特長で、TVM手術が好ましくない50歳未満の年齢の方にも行うことができます。また、子宮筋腫や良性卵巣腫瘍の合併がある方は同時に治療が行えます。TVMに比べて手術時間は長いですが、出血量はTVM手術より少なく、TVM手術後の約5%に見られた一過性の排尿困難の合併症がなく、ステージ2以上の再発率が3.4%(ステージ3以上の臨床的な再発率は1.0%)と海外の再発率4~10%の成績に比べ低く、術後成績の優れた手術です。入院期間はTVM手術と同じ7日間です。
令和2年4月からはダヴィンチという医療ロボットを使って腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)を行うロボット支援腹腔鏡下仙骨腟固定術(RSC)が保険適応になり、当院でも行っています。

骨盤臓器脱の保存的治療(手術以外の治療)

骨盤臓器脱の保存的治療としては、予防的に骨盤底筋体操の指導や特殊な医療用矯正下着のご紹介を行っています。また、ペッサリーご使用中の患者さんに対するペッサリーの自己着脱の指導も行っています。
平成26年2月からは、骨盤底筋体操教室(6~7人のグループ指導)を第3土曜日に開催、平成27年6月から初級・中級・上級コースの3コースを設け、平成29年8月からは毎月第1月曜日にも開催、平成29年11月からは継続コースを増設しました。また、平成27年6月から骨盤底筋体操個人指導外来を開設し、毎週木曜日14:00~17:00に市川美代子皮膚排泄ケア認定看護師が、1人1回30分の個人指導を行っています。さらに、平成28年8月から毎週火曜日13:00~17:00に、名古屋大学大学院医学系研究科リハビテーション理学療法専攻理学療法学講座助教の井上倫恵先生の個人指導外来を増設、平成29年5月から毎週水曜日13:00~17:00に、骨盤底筋体操専門理学療法士の渡邊日香里先生の個人指導外来を増設しました。骨盤底筋体操が正しく行えているかの評価も含め指導していますので、グループ指導の骨盤底筋体操教室と組み合わせて行うことで、より効果的な骨盤底筋体操を習得・実施することができます。軽症の骨盤臓器脱・腹圧性尿失禁・過活動膀胱の方に有効です。

尿失禁:腹圧性尿失禁 混合性尿失禁

骨盤臓器脱と同じようにお産などによる骨盤内支持組織の裂傷などが主な原因で発症する疾患です。
軽症では内服治療(スピロペント®)や骨盤底筋体操などが有効ですが、中等症以上では手術治療が必要です。
当科では、TVT(Tension-free vaginal tape)手術やTOT(Transobturator tape)手術など経腟的に行う最新の身体への負担が少なく(低侵襲)術後回復の早い腹圧性尿失禁根治手術(下半身麻酔で施行し、5日間の入院)を施行しています。麻酔は下半身麻酔(脊椎麻酔)で施行し、手術時間30分以内です。これらの手術により80~90%の治癒が望めます。
年間30~50症例の手術を行っています。

骨盤底筋体操教室

平成26年2月から第3土曜日の午前に、平成29年8月からは毎月第1月曜日にも開催しています。名古屋大学医学系研究科リハビリテーション療法専攻鈴木重行元教授と同元大学院生の理学療法士大内ふみか先生のご指導とご協力をえて開設に至りました。
骨盤底筋体操の対象者は、軽症の骨盤臓器脱・腹圧性尿失禁・過活動膀胱の方です。
内容は、まずウロギネセンターの看護師が骨盤の構造や生理、効果ある疾患とそれらのさまざまな治療方法を約10分間スライドで説明します。次に、理学療法士が実際の指導を行います。最後に座談会形式で理学療法士と看護師がご質問やお悩みの相談を受けます。個別に相談ご希望の方は個別にも相談をお受けします。平成27年6月からは初級・中級・上級コースの3コースを設け、平成29年11月からは継続コースを増設しました。1グループ5~7名で行い45分のコースです。指導時間は、第3土曜日が9:00~9:45、10:00~10:45、11:00~11:45、第1月曜日が11:00~11:45です。参加方法は、名鉄病院泌尿器科・ウロギネセンターに受診され骨盤臓器脱・腹圧性尿失禁・過活動膀胱と診断されるか、それらの疾患の予防が必要と診断された方を対象に予約制で行っています。当科受診歴のある方は電話予約(0570-023100(ナビダイヤル)泌尿器科または女性泌尿器科・ウロギネセンター)もお受けします。また、平成27年6月から骨盤底筋体操個人指導外来を開設しました。毎週木曜日14:00~17:00に市川美代子皮膚排泄ケア認定看護師が、平成28年8月から毎週火曜日13:00~17:00に名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻理学療法学講座助教の井上倫恵先生が、平成29年5月から毎週水曜日13:00~17:00に骨盤底筋体操専門理学療法士の渡邊日香里先生が、予約制で行っています。1人1回30分の指導で、腟圧計を使って骨盤底筋の収縮度を計測して正しい体操が行えているか評価して指導しています。グループ指導の骨盤底筋体操教室と組み合わせて行うことで、より効果的な骨盤底筋体操を習得・実施することができます。

骨盤底筋体操教室説明風景
骨盤底筋体操教室説明風景
骨盤底筋体操教室指導風景
骨盤底筋体操教室指導風景

ウロギネ相談外来(完全予約制・1回あたり30分)

平成30年10月よりウロギネ相談外来を開設しました。毎週木曜日14:00~17:00に、1回あたり30分間で個別に対応します。女性泌尿器科について経験豊富な市川美代子皮膚排泄ケア認定看護師と、骨盤底筋体操専門の理学療法士渡邊日香里先生が交代で担当しています。「症状はあるけれど、受診に抵抗がある。」「先生に聞く前に病院の内容を知りたい」「骨盤底筋体操を教わってみたい」など、様々なご相談にお応えします。
相談外来をご希望の方は当院ウロギネセンターへご予約ください。

資格・認定

メンバー

  • 医師:3名
  • 皮膚排泄認定(WOC)看護師:1名
  • 理学療法士:2名
  • 助産師:1名
  • 看護師:8名
  • 排尿機能検査士:5名
  • 医療支援センター看護師:1名
  • 医事事務:2名

総勢:23名

私たちが初診から、退院後までサポートします
◎主に骨盤臓器脱の患者さんを病棟で入院から退院までサポートします。日常生活は困っているけれど、手術については踏み切れない方は、手術前後の流れをイメージ出来るようにお手伝いします。
病棟看護師

◎ウロギネセンターでは主に尿失禁や、骨盤臓器脱などの女性の皆さんが対象になります。同じ女性として、皆さんが自分らしく毎日を過ごしていけるように、助産師もメンバーとしてお手伝いさせていただきます。
助産師

担当医紹介

役 職
女性泌尿器科部長 兼 ウロギネセンター部長
氏 名
成島 雅博
卒業年
1984年
専門領域
腹腔鏡手術
ロボット手術
内視鏡手術
女性泌尿器科・ウロギネコロジー
排尿障害
資 格
医学博士
日本泌尿器科学会代議員 泌尿器科専門医 泌尿器科指導医
日本排尿機能学会代議員 日本排尿機能学会専門医
日本泌尿器内視鏡学会代議員 泌尿器腹腔鏡技術認定医
ダヴィンチXiコンソール術者サーティフィケート
泌尿器ロボット支援手術プロクター
日本ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会評議員
腹腔鏡下小切開手術施設基準医 腹腔鏡下小切開手術練達医
産業医科大学産業医ディプロマ
所属学会
日本泌尿器科学会
日本泌尿器内視鏡学会
日本ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会
日本排尿機能学会
日本女性骨盤底医学会
日本骨盤臓器脱手術手技学会

コメント

がん・女性泌尿器科疾患・排尿機能障害など幅広く力を入れて診断治療にあたっています。 内視鏡手術、腹腔鏡手術、ダヴィンチ手術、女性泌尿器科手術が得意分野です。 迅速な診断治療を心がけておりますのでよろしくお願いいたします。
役 職
泌尿器科部長 兼 医療支援センター副センター部長
氏 名
荒木 英盛
卒業年
1998年
専門領域
泌尿器がん
結石治療
女性泌尿器科手術
ロボット手術
資 格
医学博士
日本泌尿器科学会専門医・指導医
日本泌尿器科 内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医
日本ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会 腹腔鏡下小切開手術(ミニマム創内視鏡下手術)施設基準医
がん治療認定医
Certificate of da Vinci System Training As a Console Surgeon
所属学会
日本泌尿器科学会
日本泌尿器内視鏡学会
日本ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会
日本女性骨盤底医学会
日本骨盤臓器脱手術手技学会
日本がん治療学会

コメント

専門は泌尿器がんです。女性泌尿器疾患も対応します。腹腔鏡手術から小切開手術・拡大根治手術・ダヴィンチ手術まで担当します。常に安全かつ質の高い手術を心がけています。よろしくお願いします。
役 職
女性泌尿器科付部長 兼 ウロギネセンター副センター部長
氏 名
加藤 久美子
卒業年
1982年
専門領域
女性泌尿器科・ウロギネコロジー(女性尿失禁や骨盤臓器脱の治療)
資 格
医学博士
日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医 泌尿器科指導医
日本排尿機能学会代議員 日本排尿機能学会専門医

所属学会
日本泌尿器科学会
日本排尿機能学会
日本女性骨盤底医学会
日本骨盤臓器脱手術学会
日本老年泌尿器科学会
ICS(国際尿禁制学会)
IUGA(国際ウロギネコロジー学会)

コメント

1986年に名古屋大学で本邦初の女性尿失禁外来の開設に関わり、名古屋第一赤十字病院の女性泌尿器科で合わせて40年近く、尿もれ(咳や運動で腹圧がかかってもれる腹圧性尿失禁、したいと思うと我慢が効かずにもれる切迫性尿失禁・過活動膀胱)、膀胱や子宮が下がってさまざまな排尿障害を引き起こす骨盤臓器脱の診療に取り組んできました。生活指導(行動療法)、薬物療法、低負担の手術などを組み合わせて、中高年女性の排尿の悩みを支えていければと思います。