最新の手術支援ロボット(da Vinci Xi)導入

ごあいさつ

当院泌尿器科は、腹腔鏡下小切開手術、腹腔鏡手術など体への負担の少ない最新の手術方法を、時代の流れに沿って導入し質の高い治療を提供してまいりました。 平成 28年 6月 4日、更に質の高い手術が可能となる最新のアメリカ合衆国インチュイティブ社が開発した 手術支援ロボットダヴィンチ ( da Vinci Xi ) を導入いたしました。ダヴィンチによるロボット支援手術は、ダヴィンチを使って行う腹腔鏡手術です。 日本では、平成 24年 4月前立腺癌に対する前立腺全摘出術が保険収載 され、平成 28年 4月に腎癌に対する腎部分切除術が保険収載 されました。 特徴は、腹腔鏡下手術や開腹手術に比較して精度の高い手術が可能になります。 前立腺癌では、術後尿失禁の早期回復や勃起神経温存手術成績の向上が確認 されています。 腎癌の腎部分切除術では、癌根治率、腎機能温存、合併症低下において通常の腹腔鏡手術に勝ることが確認 されています。 当科では、今日まで腹腔鏡下小切開前立腺全摘出術、腹腔鏡下小切開腎部分切除術、腹腔鏡下腎部分切除術を行って素晴らしい手術成績を出してまいりましたが、ダヴィンチによる手術を平成 28年 10月 1日から開始し、更に体への負担の少ない、精度の高い手術を行っています。

名鉄病院手術室:最新のダヴィンチ(da Vinci Xi)

名鉄病院手術室:最新のダヴィンチ(da Vinci Xi)

ダヴィンチとは?

手術支援ロボット(ダヴィンチ)は、より精度の高い鏡視下手術を可能とする手術を補助する医療用ロボットです。 体に小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術や胸腔鏡手術を、解像度の高いハイビジョン3D内視鏡画像を見ながら、繊細な動きをするロボットアームを操作して行う手術です。
ダヴィンチは、中枢のビジョンカート(図1)、ロボットアームとハイビジョン3D内視鏡を装着して術者の指令通りの動きで手術を行うペイシェントカート(図2)、術者がロボットアームと内視鏡の手術操作を指令するサージョンコンソール(図3)から構成されています。
術者は、手術台の傍に置かれたサージョンコンソールのビューア(ハイビジョン3D画像)の10~20倍に拡大された手術部位の映像(図4,5)を見ながら、先端5mmの自由自在に動く鉗子のついたロボットアームを操作して手術を行います(図6,7,8)。
腹腔鏡手術や胸腔鏡手術では、助手が内視鏡を操作するため、術者が内視鏡の動きを口頭で助手に支持する必要があります。ダヴィンチでは術者が内視鏡を操作するため、常に適切な手術部位を映し出して手術を行うことができるため、効率良く手術を進めることができます。 また、10~20倍に拡大された3D画像により、肉眼では認識できない細い血管や神経も確認できるため、出血の少ない精度の高い手術が行えます。 さらに、止血に用いる電気メスも、現在世界最高性能と定評のあるドイツのエルベ社製を装備しているため、極めて出血の少ない手術が可能となりました。

図1 ビジョンカート
図1
ビジョンカート

図2 ペイシェントカート
図2
ペイシェントカート

図3 サージョンコンソール
図3
サージョンコンソール

図4 サージョンコンソール
図4 サージョンコンソール

図5 サージョンコンソール3Dビューア
図5 サージョンコンソール3Dビューア

図6 5mmの鉗子:米粒をつかんでいる
図6 5mmの鉗子:米粒をつかんでいる

図7 5mmの鉗子:手以上に自由自在に動く
図7 5mmの鉗子:手以上に自由自在に動く

図8 手術操作

図8 手術操作

旧モデル(da Vinci SやSi)との違いは?

Xiは、da Vinci 4世代の最新機種です。

  1. アームが細くなった:アーム同士の干渉が軽減し、術中のアーム干渉による手術操作の中断が劇的に減少し、手術時間が短縮した。体格の小さい患者様に対してもスムーズに手術が行えるようになった(図9)。
  2. 内視鏡の太さが従来の12mmから8mmに細くなった:内視鏡を挿入する傷が小さくなり、鉗子を挿入する傷からも内視鏡を挿入可能になったので、手術部位を多方から観察可能になった。
  3. ペイシェントカートが患者様に対してどの方向からも簡単に装着可能になった:手術時間が短縮し、いろいろな手術への対応が容易になった。
  4. アームの可動域が広がった:旧モデルでは、手術中ペイシェントカートを装着し直す必要があった手術でもその必要なくなったため、手術がスムーズに進行し手術時間が短縮した。
  5. ペイシェントカートを切り離す時間が短縮:手術時間が短縮し、緊急時の対応が迅速に行えるようになった。
  6. サージョンコンソールのビューア、アームレスト、フットペダル位置が執刀医の体型に合わせた調整が可能になった:執刀医は常に楽な姿勢で手術を行えるため、確実な手術が可能になった。

図9 da Vinci Xi のカメラ(旧モデル1.6kgから600gに軽量化した)
図9
da Vinci Xi のカメラ
(旧モデル1.6kgから600gに軽量化した)

図9 左が旧モデルのカメラ:径12 mm、右がXiのカメラ:径8 mm
図9
左が旧モデルのカメラ:径12 mm
右がXiのカメラ:径8 mm

ダヴィンチの対象疾患と費用

現在、ダヴィンチは泌尿器科領域の前立腺癌の前立腺全摘出術腎癌の腎部分切除術に対して保険適応になっています。従来の開腹手術や、腹腔鏡手術と自己負担は同じです。残念ながら、その他の手術に関しては先進医療として自費診療で行われています。

ダヴィンチのメリット

  1. 傷口が小さい:内視鏡や鉗子を挿入するための10~15mmの傷が5~6か所。
  2. 術後疼痛が少ない:傷が小さいので痛みが少ない。
  3. 術後回復が早い:傷が小さいので回復が早く、術後2日目にはシャワー浴や入浴が可能。
  4. 手術合併症が少ない:傷が小さいので化膿が少なく、開腹手術に比べ腸閉塞などの発生率も低い。
  5. 術中出血が少ない:炭酸ガスによる気腹下の手術であること、拡大した3D視野での手術で、精度の高い手術ができるため出血が少ない。
  6. 機能温存手術に有利:前立腺癌手術などの、術後尿失禁の回復が早く、勃起機能温存手術での成績が良い。
  7. 執刀医の体力的負担が軽減:執刀医が疲れにくいので、より精度の高い確実な手術ができる。

ダヴィンチ対象疾患の詳細

前立腺癌に対する前立腺全摘出術

前立腺は膀胱の出口に接した尿道周囲をドーナツ状に取り囲む臓器で前立腺液を分泌します。 前立腺液は精液の95%を占め精子の栄養源となります。 この前立腺にできる悪性腫瘍が前立腺癌です。 治療せずに放置すれば進行してリンパ節や骨など多臓器に転移して、癌が原因で死亡することがあります。
早期前立腺癌( 病期B,T2以下 )には前立腺全摘出術( 天皇陛下が受けられた手術 )が標準的な治療として行われています。 前立腺(前立腺部尿道含む)と精嚢を摘出し膀胱と尿道をつなぐ手術ですが、前立腺に接する尿の漏れを防止する働きをする外尿道括約筋に囲まれている部分の尿道と膀胱をつなぐために、外尿道括約筋機能が低下して術後一定期間尿漏が起こります。 また、前立腺は、リンゴの皮のような薄い膜(被膜)に覆われていますが、この膜の中に勃起神経が網目状にあるため術後は勃起不全となります。 勃起機能を温存するには、通常摘出する前立腺被膜を残す必要があるため、癌細胞を残してしまう危険性があります。 術前のMRI検査所見や前立腺生検結果から被膜を残しても癌細胞を完全に摘出できると判断される若い患者様には、勃起神経を温存する神経温存前立腺全摘出術という手術方法があります。 だだし、神経温存手術を行った患者様の勃起機能の回復には、一定の時間が必要であり、一定の割合の患者様は元通りには回復しません。 手術方法として、開腹手術や腹腔鏡下手術、腹腔鏡下小切開手術などがありますが、体への負担や出血量に加えて、術後の尿失禁の回復の速さ、勃起機能温存術式の温存率などの成績の良さから、ダヴィンチによる手術が現在では最も優れた手術法となっています。

図10 骨盤内臓器の模式図:前立腺全摘出術は、右図の点線の範囲を摘出

図10 骨盤内臓器の模式図:前立腺全摘出術は、右図の点線の範囲を摘出

図10 骨盤内臓器の模式図:前立腺全摘出術は、右図の点線の範囲を摘出

ロボット支援前立腺全摘出術(RALP)

平成24年4月に保険収載され、現在、本邦でもダヴィンチによるロボット支援手術が標準的な手術となりました。 ロボット支援手術は、ダヴィンチを使用して行う腹腔鏡手術です。 図11のように、腹部6か所の小さな穴から内視鏡、鉗子、電気メスなどを挿入して行います。

図11 ダヴィンチ前立腺全摘出術の傷

図11 ダヴィンチ前立腺全摘出術の傷

開腹手術や通常の腹腔鏡手術に比較して、下記のようなメリットがあります。
  1. 術中出血が少ない。
  2. 手術時間が短縮する。
  3. 回復が早い。
  4. 術後の尿失禁の回復が早い。
  5. 勃起神経温存手術の機能回復率が良い。

腎癌に対する腎部分切除術

腎臓はお臍の少し上の背中側左右に2個存在します。 血液を濾過し尿毒症物質を尿の中に排泄する臓器です(図12)。 腎臓には尿を産生する腎実質と作られた尿を集めて尿管に送る腎盂があります。 この腎実質にできる悪性腫瘍が腎癌です(図13)。 治療せずに放置すれば進行してリンパ節・肺・骨など多臓器に転移して、癌が原因で死亡することがあります。 手術で摘出する以外に根治性のある治療法はありません。
腎癌を摘出する方法として、癌がある側の腎臓を全摘する根治的腎摘出術と癌のある部分だけ切除する腎部分切除術(図13)がありますが、早期の腎癌に関しては腎機能の低下を最小限に抑える腎部分切除術が良いとされています(図13)。 通常、腎部分切除操作中は、出血を防止するために腎動脈の血流を一定時間遮断することが必要です。 腎動脈遮断時間は、長時間になると温存した腎臓の機能が低下するということが分っているため、出来る限り短縮することが求められます。 この腎動脈遮断時間が、ダヴィンチによる手術は腹腔鏡手術に比較して短時間で済むことが確認されています。 また、癌を完全に摘出することが最も重要ですが、この成績もダヴィンチが勝っています。 しかも、術中出血もダヴィンチが最も少ないことが確認されています。

図12 左右腎臓の位置
図12 左右腎臓の位置

図13 腎臓の構造と腎癌 腎部分切除術は、赤い点線の範囲を切除する
図13 腎臓の構造と腎癌
腎部分切除術は、赤い点線の範囲を切除する

ロボット支援腎部分切除術(RAPN)

今年4月に腎癌に対する腎部分切除術が保険収載されました。
ロボット支援手術は、ダヴィンチを使用して行う腹腔鏡手術です。図14のように、腹部5~6か所の小さな穴から内視鏡、鉗子、電気メスなどを挿入して行います。

図14 ダヴィンチ腎部分切除術の傷

図14 ダヴィンチ腎部分切除術の傷

腎癌に対しての標準術式は従来患側腎の全摘出術でした。 しかし、現在は、早期腎癌では腎部分切除と全摘での再発率の差はないということが判明したため、早期腎癌に対しては腎部分切除術が標準術式となりました。 ところが、腎部分切除術は、全摘に比較して術中出血量も多く合併症も高い難しい手術です。 体に負担の少ない腹腔鏡下の腎部分切除術においては、更に高度な技術を要する手術で、かなりの経験を積んだ泌尿器科医師でなければ行えない術式です。
腎部分切除に重要な3つの要素は、癌根治率(癌の完全切除)、腎機能温存(腎血流を止める時間を腎機能に影響がない一定時間以下に抑えること)、合併症低下(出血量や尿瘻などの合併症の減少)です。 これら条件を満たした上で、体に負担の少ない、回復が早い手術としてロボット支援手術が確認されたために保険適応となりました。

開腹手術や通常の腹腔鏡手術に比較して、下記のようなメリットがあります。
  1. 術中出血が少ない。
  2. 手術時間が短縮する。
  3. 回復が早い。
  4. 腹腔鏡手術に比較して癌を確実に切除できる。
  5. 腹腔鏡手術に比較して腎機能温存に優れる。
  6. 腹腔鏡手術に比較して合併症が少ない。

平成28年7月31日

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