部門・センター

糖尿病センター

概要・特色

ごあいさつ  糖尿病センター開設にあたって

日本における糖尿病人口は、予備軍も含めると5人に1人が糖尿病を疑われる状況になっています。糖尿病の初期には自覚症状もないため軽視されやすいのですが、高血糖を放置すると全身の動脈硬化を進展させ様々な血管合併症を引き起こします。また、最近ではがんや認知症のリスクも高くなることがわかっています。実際、糖尿病患者における平均寿命や健康寿命は健康人と比較して約10年短いといわれています。そういったことから、糖尿病治療の目標は合併症抑制による健康寿命の確保であると「糖尿病治療ガイド」にもうたわれています。実際の糖尿病診療においては、ただ血糖コントロールを行うだけでなく患者背景に基づいて患者さん中心のアプローチをする「オーダーメイドの糖尿病治療」が必要になります。
そこで、当院では平成25年4月1日に糖尿病センターを開設し、医師だけでなく様々な職種からなる専門チームが診療にあたることにより相乗効果を生み、治療の個別化を実現するべく努力しています。患者さんの生活・社会背景を考慮し患者さんとの信頼関係を深めながら診療に当たり、最善の治療を最適な時期に行うことができるように常に努力していきたいと考えています。

糖尿病センターの構成メンバー

内分泌代謝内科医師、看護師、薬剤師、検査技師、管理栄養士、放射線技師
理学療法士、臨床工学技士
*糖尿病看護認定看護師1名、糖尿病療養指導士18名(看護師 8名、薬剤師 2名、管理栄養士 3名、検査技師 4名、理学療法士 1名)が在籍しています。
眼科、皮膚科、整形外科、循環器内科の医師にも協力していただいています。

診療内容

専門外来

1.一般外来(内分泌・代謝内科外来)

糖尿病専門医3名を含む4人の常勤医師が糖尿病の診療にあたっています。当科の外来では、患者背景を考慮して食事・運動療法などの日常生活指導や薬物療法を行うことで一人一人に適した診療を提供することを目標としております。
近年の糖尿病医療の進歩は著しく、多くの新しい薬が開発されています。新薬の治験にも多く参加しております。
また、他科やコメディカルと密接に連携しながら糖尿病合併症の予防・早期発見・治療を含めた全身管理を行うことができるよう努力しています。

平均HbA1c7%未満達成率
2014年度6.99%59.6%
2015年度6.94%60.2%
2016年度6.94%62.0%
2017年度6.82%62.2%
2018年度6.81%63.7%
2.糖尿病透析予防外来(D8診察室、2階指導室)

糖尿病の合併症の一つである糖尿病性腎症の進行を防ぐための指導を行う外来です。腎症の進行を防ぐには、血糖コントロールだけでなく、血圧コントロールおよび食事療法が非常に重要になります。現在、透析導入になる原因疾患の1位は糖尿病性腎症であり、腎症が進行していると脳梗塞や心筋梗塞・狭心症といった動脈硬化性疾患も多くなることがわかっています。そこで、この外来では糖尿病専門医と糖尿病療養指導士の資格をもつ看護師・管理栄養士が連携して食事および生活の指導にあたっています。生活習慣や食事での塩分摂取量などを評価し、イラストを用いた独自のパンフレットを用いて、患者さんにあった指導を行っています。平成25年4月1日より開設し、現在では年間200人以上の患者さんを対象に、毎月約100件の指導を行っています。

 診療日時:初回のみ水曜日の予約制。2回目以降は通常外来診療日
 診療場所:内科 D8診察室、1号館2階 指導室
 対象となる患者さん:HbA1cが6.5%以上もしくは糖尿病の薬物療法を行っている患者さんで、糖尿病性腎症2期以上の方。
 ※すでに透析療法を行っている方は対象外になります。

実際の指導風景
実際の指導風景
実績
平成28年12月までに指導した311名について解析すると、指導前後でHbA1cは7.1±0.98%から7.0±1.11%、収縮期血圧は147.5±19.9mmHgから138.2±14.3mmHgと有意に改善し、約25%の患者で腎症の病期の改善を認めました。
3.フットケア外来

診療日時:毎週火曜日・木曜日 9時から12時 予約制
診療場所:D4診察室

患者さんとともに歩むフットケア

フットケア外来は糖尿病患者さんの足のトラブル予防と早期発見、早期治療を目標
として、足を守るために行っています。胼胝、鶏眼、陥入爪、爪肥厚、白癬といった
足のトラブルに対し、看護師がアセスメントとケア(予防的処置)を行います。
新しい機械を購入して、爪の処置が手早く行えるようになりました。さらに血流評価を簡単に行える機械も導入しました。
糖尿病の患者さんで足のトラブルでお悩みの方は是非ご相談ください。

毎年、年間約500名ほどの延べ患者さんがケアに来られています。
何らかの足のトラブルがあっても早期に発見できるため、守ることができています。
これからも患者さんの声に耳を傾けながら、ともに歩むフットケア外来を続けます。

4.インスリン導入外来
糖尿病患者数が増加の一途をたどる一方で、仕事や経済的理由など教育入院が困難であることが多くなってきています。しかし本来、働き盛りの世代ほど血糖コントロールが重要です。そこで、当院では外来にてインスリンおよびインクレチン製剤の自己注射導入が円滑に行えるように、糖尿病専門医と糖尿病療養指導士の資格をもった薬剤師、検査技師がチームを組んで対応しております。注射製剤の自己注射指導及び自己血糖測定の指導を行い、あわせて低血糖時の対処方法など服薬指導も行っています。

「インスリン」は本来、体の中の膵臓という臓器から分泌されるホルモンであり、体内で唯一血糖値を下げることができるホルモンです。インスリン治療が始まったからと言って、自分の膵臓からインスリンが出なくなるということはありません。むしろ糖尿病のコントロールが悪い場合に、早期にインスリン注射を導入することによって膵臓の機能を温存・回復させることができます。
「インクレチン」とは食事摂取に伴い消化管から分泌され,膵臓に作用してインスリン分泌を促進するホルモンの総称です。これまでにGIPとGLP-1の2つのホルモンが、「インクレチン」として機能することが確認されています。インクレチンを分解するDPP-4という酵素を阻害することでインクレチンの働きを長続きさせるようにした内服薬がDPP4阻害薬と呼ばれる内服薬です。一方、GLP- 1の構造を少し変えて(アミノ酸の配列の変更など)、DPP-4による分解を受けにくくしたのがGLP-1アナログという薬です。アナログとは「類似の」という意味で、GLP-1そのものではないけれどもほぼ同じ働きをするということです。この薬は注射製剤なので定められた回数を患者さんご自身で注射する必要があります。この注射指導も外来で行っています。

診療日時毎週木曜日 14時、15時 予約制
糖尿病教室
1.外来糖尿病教室
医師・管理栄養士をはじめとする医療スタッフがそれぞれの専門的立場からお話しさせていただき、皆さんからの疑問・質問にもお答えいたします。また管理栄養士からの食事のお話は毎回季節や旬に合わせて変わりますので必見です。平成29年5月から基本編・応用編に分けて開催しております。基本編に関しては、糖尿病と初めて言われた方向けの講義形式の教室になっており、月1回、4回で1クールとなっています。4回出席された方には賞状と粗品を進呈しています。応用編に関しては、より糖尿病に関する知識を深めるためになるべく参加型の教室を目指しております。月1回、6回で1クールですが、興味のある回だけの参加も可能です。基本編では、当院独自のテキストを使用して各スタッフがお話していますが、購入されない場合は当日のみの貸し出しもしております。また教室に参加できない方でもテキストのみ購入することは可能です。内科外来でお申し出ください。
表彰状と粗品の写真
表彰状と粗品の写真
開催曜日【基本編】毎月第2木曜日
【応用編】毎月第4木曜日
※新型コロナウイルス感染拡大防止のためしばらくの間、糖尿病教室は中止させていただきます。
時間午後2時30分から 1時間程度

2.カンバセーションマップ
通常の教室は講義形式ですが、当院ではスゴロクのような「会話のための地図」【カンバセーションマップ】を用いた対話型の糖尿病教室を行っております。糖尿病のことを皆で語り合うことでまた新たな気づきが生まれ、自分一人ではないとわかって安心したなどの意見が多く聞かれます。糖尿病教室応用編の中でマップを使用した回を設けております。

個別栄養相談

もちろん、個人での栄養相談は随時行っております。

糖尿病教育入院
曜日時間内容担当者場所
10:00~糖尿病とは医師1-6処置室
14:00~食事療法栄養士1-6処置室
14:30~教室/マップ第4会議室
14:00~薬物療法薬剤師1-6処置室
14:00~糖尿病の合併症医師1-6処置室
13:00~運動療法理学療法士検討中
14:00~フットケア含め
日常生活について
看護師1-6処置室
14:30~教室/マップ第4会議室
15:00~糖尿病の
検査について
検査技師1-6処置室
14:00~まとめ医師1-6処置室

糖尿病を初めて指摘された方や糖尿病コントロールがうまくいっていない方を対象にクリティカルパスを用いて2週間を目安に教育入院を行っています。
平成28年1月から入院中の糖尿病教育の充実を図るため、毎日病棟で教室を開催しております。2週間で1クールになっております。
また、運動療法として、昼食後に病棟内でラジオ体操を行い、その後、可能な方には歩数計を貸し出し、院内ウオーキングに行っていただいています。歩数を確認するとともに、運動の前後で血糖測定を行っています。運動することで実際に血糖が下がることが体感できるため、モチベーションの向上につながっています。

入院期間はあくまで目安ですので個々にご相談可能です。最短では2泊3日という方もみえます。糖尿病教室に関しても入院した日から参加できますので、何曜日からでも入院は可能となっています。

入院中の教室風景
入院中の教室風景
運動療法の風景
運動療法の風景
最新のインスリンポンプ治療

近年、インスリンポンプに「パーソナルCGM」(持続血糖測定)を搭載した機器が使用可能になりました。このパーソナルCGM機能を搭載したインスリンポンプ療法をSAP(Sensor Augmented Pump)療法といいます。インスリンポンプとは、必要なインスリンを少量ずつ体内に持続的に皮下注入する携帯型の小型機器で、1型糖尿病や糖尿病合併妊婦に多く用いられています。そのポンプにCGMが搭載されることで、間質液中の糖濃度を測定し、その値をインスリンポンプのモニターに表示します。これによって、従来の血糖自己測定やHbA1cの値では把握できない血糖変動を的確に把握することができ、低血糖時にはインスリン注入が停止されるなど予期せぬ高血糖や低血糖への対応がより早くできるようになりました。
当院でもこの最新の機器を使用することが可能になっています。

血糖コントロールが不安定な1型糖尿病の方やインスリン頻回注射を行っている2型糖尿病の方、膵臓の手術をされた方などがよい適応になります。

メドトロニックiPro2
メドトロニックiPro2
パーソナルCGM
パーソナルCGM
24時間血糖測定を行えるFreeStyle リブレProとリブレ

センサーを装着するだけで最大2週間、24時間にわたる血糖値を知ることができるFreeStyleリブレProとリブレを当院では使用しています。腕の後ろに500円玉くらいの大きさのセンサーを装着するだけで自分の血糖値を知ることができます。センサー装着時もほとんど痛みはなく、装着後もほとんど違和感がありません。
自分の24時間にわたる血糖値を知ることで、食事や運動の内容・薬の内容やインスリン量を見直すことができ、血糖コントロールの改善が期待できます。
インスリン自己注射治療中の方は、リブレを病院からリースすることで従来の自己血糖測定器と併用して使用することができます。また、内服治療の方でもリブレProを用いて2週間の血糖変動を知ることができます。なかなか思うようにコントロールが改善しない方、血糖変動が激しくて困っている方などご興味のある方はお気軽にご相談ください。

リブレセンサー
リブレセンサー
認知症疾患医療センターとの連携

当院は認知症疾患医療センターに認定されており、糖尿病センターとしても認知症センターとの連携に力を入れています。
糖尿病患者さんでは認知症の発症リスクが高いことが様々な疫学研究で判明しています。2型糖尿病は、血管に障害を起こすため脳血管性認知症の発症リスクを高めますが、アルツハイマー型認知症になるリスクも高いことがわかっています。
また、認知症が進行すると糖尿病コントロールは悪化し、高血糖がさらに認知機能を低下させるという悪循環が高齢者において非常によくみられるようになっています。認知症が重度の場合、一般病院での入院が困難になることが多いのですが,当院では認知症サポートチームと連携し周辺症状をコントロールしつつ入院を継続できるように配慮しています。患者さん個々の社会背景に応じた糖尿病治療を選択することで、患者さんやご家族のご要望にお応えできるように努力していきたいと考えております。
また、当科に通院されている糖尿病患者さんの認知症早期発見・早期治療のために、物忘れスクリーニングテストを行ったり、透析予防外来で指導を受けている70歳以上の患者さんには認知機能の評価を年1回行っております。必要に応じて認知症疾患医療センターに紹介いたしますので、ご心配なことがあれば主治医にご相談ください。

病診連携について

当院では、病診連携に力を注いでおります。糖尿病センターでも地域の診療所の皆さんと密に連携を取り合っていきたいと考えています。
今まで紹介させていただいた各専門外来及び糖尿病教室などに関しては、当院通院中の患者さんだけではなく地域の診療所の患者さんに対しても簡単に受けていただくことができます。また教育入院に関しても、かかりつけの診療所より依頼があれば、外来受診をせずに直接入院の手続きをとることも可能です。
また、糖尿病は細小血管障害・動脈硬化といった血管合併症だけでなく悪性腫瘍の罹患率も高いことがわかっています。当院では外来及び入院患者に対して動脈硬化の早期発見・早期治療のために頸動脈エコー・脈波図・負荷心電図などを積極的に行っています。そこで、地域の診療所に通院されている患者さんに対しても、血管合併症と悪性腫瘍のスクリーニングを兼ねた検査を一括して行いその場で結果説明ができるようにしたいと考えています。具体的には腫瘍マーカーを含めた血液検査、尿検査、脈波図、負荷心電図、頚動脈エコー、腹部エコー、神経診察、眼科受診などを半日で行い、その日に患者さんに結果説明をさせていただき、またその結果をかかりつけ医に情報提供させていただきます。簡略化した申込書のみで受診していただき、情報のやり取りをしていくことで将来的に地域との循環型パスの作成を目指しています。
外来受診、教室参加、合併症精査、入院などに関してのご依頼は病診連携室までご連絡ください。