部門・センター

関節鏡・スポーツ整形外科センターのご紹介

概要・特色

関節鏡・スポーツ整形外科センターではプロスポーツ選手から一般の方まで幅広く診療し、手術が必要な場合には主に関節鏡(内視鏡)手術を行っております。切開手術と比べて傷が小さく、痛みが少なく、早期の競技・社会復帰が可能です。肩の脱臼癖、肩腱板断裂、野球肩、野球肘、肘や足首の関節ネズミ、膝半月板損傷などでお困りの方、ご相談ください。

ごあいさつ

センター長の土屋篤志です。関節鏡の礎を築いたのは、我が国日本です。現在では、関節疾患を治療するうえで最も有効な手段として世界中で認知されています。
2009年に当院へ赴任して以来、関節鏡手術を200件以上行ってまいりました。特に肩関節・肘関節に対する関節鏡手術を沢山行わせていただいております。低侵襲(ていしんしゅう)な手術をめざし、全国トップレベルの先生方との手術手技の研修に参加し、最新の手術方法にも対応できるよう日々研鑽を積んでおります。ただ、実際には関節疾患の患者さん全員に手術が必要となる訳ではありません。関節疾患は保存療法が基本であり、必要な場合にのみ関節鏡手術を行っております。
関節疾患の診断は一般的にMRI、CTが中心となっていますが、当院では超音波診断装置を診察室に常時設置し、リアルタイムで患者様と一緒に超音波画像を見ながら診断を行っています。また、関節注射の際にも、超音波診断装置を用い注射針を誘導し、ピンポイントに患部に注射が出来るよう工夫をしております。

センター長(整形外科部長兼務)土屋 篤志

フォーラムの開催

関節鏡センターではフォーラムを開催しています。講演や体操教室、シンポジウムを行い、シンポジウムでは参加者と意見を交わしました。

第1回関節鏡センターフォーラム 「肩が上がらなくてお困りの肩へ」
肩の疾患と手術に関する講演土屋 篤志 (関節鏡センター長)
肩体操教室山北 康介 (理学療法士)
シンポジウム参加者と意見

診療内容

関節鏡手術とは

数mm~1cm程度の皮膚切開から、内視鏡を関節内に挿入し、 専用の細い器具を挿入し行う手術方式です。内視鏡は直径2~4mm。関節内の患部をモニターで拡大するため、小さな病変でも正確に捉え、治療が行えます。
手術創が小さく、筋肉などの組織を痛めることが少ないため、比較的早期からリハビリが行えます。近年、関節鏡用器具の発達に伴い、様々な病気、怪我に対して関節鏡手術が行えるようになっております。
肩(かた)
肩腱板断裂(かたけんばんだんれつ)

肩の運動障がい、運動痛、夜間痛など。肩の動きが固くなることは少ないです。

反復性肩関節脱臼(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)

いわゆる脱臼癖です。脱臼の回数を増すごとに軽微な外力で起こるようになり、スポーツ活動ばかりでなく、寝返りでも起こることがあります。当院では、コンタクトスポーツ選手(ラグビー、アメフト、柔道など)に対しては、関節鏡下バンカート・ブリストウ法という術後4ヶ月の早期復帰が可能で、再脱率が低い手術法を行っています。

肩関節唇損傷(かたかんせつしんそんしょう)

つかえるような、引っかかるような感覚がおきます。

肩関節拘縮(かたかんせつこうしゅく)[いわゆる五十肩(ごじゅうかた)]

初期には痛みが強く夜間痛も出現します。次第に関節の動きが悪くなります。(運動制限)

肘(ひじ)
変形性肘関節症(へんけいせいひじかんせつしょう)

肘を動かすと痛みが強くなり、安静にすると痛みは軽減します。可動域制限がおこり肘の屈伸の動きが主に制限され、手が口に届かないなどの日常生活動作に支障が出ることがあります。ロッキングがおこると、急に屈伸とともにある角度で肘が動かない固まった状態になり、少しでも動かそうとすると激痛を生じます。

野球肘(やきゅうひじ)

内側型では投球時の肘痛、小指側のしびれ感などの出現。外側型では肘外側の疼痛に加え、ロッキングをおこすことがあります。後方型ではフォロースルーでの肘後方の痛み、ロッキングをおこすこともあります。

膝(ひざ)
膝前十字靭帯断裂(ひざぜんじゅうじじんたいだんれつ)

スポーツ中などに、膝がガクッとなったり、ずれた感じが起こり、受傷時に断裂音(ポップ音)が聞かれたりする場合があります。痛みのピークは短く不安定感が主な症状です。

膝半月板損傷(ひざはんげつばんそんしょう)

膝の屈伸の際に痛みやひっかかりを感じたりします。ひどい場合には、膝に水がたまったり、急に動かなくなったり、歩けなくなるほど痛くなる場合があります。

初期変形性膝関節症(しょきへんけいせいひざかんせつしょう)

動作開始時に痛みを感じることが多く、特に階段の昇降時の痛みが特徴です。伸びない、曲がらない、ぐらぐらする、O脚になってきたなどです。

その他
足関節骨軟骨損傷(そくかんせつこつなんこつそんしょう)

関節軟骨を含む骨軟骨の一部が剥がれ落ちてしまうものです。運動時の軽い痛みから、歩けないほどの痛みまでさまざまです。捻挫の後遺症としておこる場合もあります。

施行する手術

肩腱板断裂に対する関節鏡視下手術(鏡視下腱板修復術)

肩のインナーマッスルである腱板の断裂により痛みが出たり、引っかかり、筋力の低下が起こったりします。アンカーという糸の付いたネジやビスを骨に打ちこみ、断裂した腱を骨に縫合する手術です。全身麻酔下に行います。術後は3~4週間程度は外固定が必要です。

肩反復性脱臼に対する関節鏡視下手術(鏡視下バンカート法)

脱臼により肩の関節窩(ソケット側)から靭帯がはがれたり、関節窩に骨折が起こったりして、脱臼しやすくなっています。アンカーという糸の付いたネジやビスを骨に打ちこみ、靭帯を関節窩に縫い付けて修復します。全身麻酔下に行います。術後は2~3週間程度は外固定が必要です。

肩関節唇損傷に対する関節鏡視下手術(鏡視下関節唇修復術)

肩関節唇損傷とはけがや投球などの繰り返しの動作により肩の関節窩(ソケット側)から縁取りの関節唇がはがれて、関節の間に挟まったり関節にゆるみがおこったりして痛みが出た状態です。脱臼の手術と同じようにアンカーを関節窩に打ち込み、関節唇を関節窩に縫い付けて修復します。全身麻酔下に行います。術後は2~3週間程度は外固定が必要です。

肩関節拘縮(いわゆる五十肩)に対する関節鏡視下手術(鏡視下授動術)
肩の中で長期間炎症が続くことで肩関節包(関節の袋)が硬く、分厚くなって伸び縮みが悪くなり、肩の動きが悪くなった状態です。関節包の一部分を切り取り、関節窩の縁で関節包を全周性に切開し関節の動きを改善します。再び関節が硬くならないように術後早期からのリハビリが重要です。
膝半月板損傷に対する関節鏡視下手術(半月板切除術、半月板縫合術)

半月板は大腿骨と脛骨の間にある、クッションです。スポーツなどで強い衝撃が加わったり、不用意に捻ると亀裂が入ったりすることがあります。これが半月板損傷です。膝に水が溜まる、階段を下りるときやしゃがんで立ち上がるときなどに痛みを感じる場合、曲げ伸ばしでの引っかかる場合は半月板損傷が起こっていることが疑われます。また半月板が折れ曲がって挟まると膝を完全には伸ばせなくなることがあります。これに対して半月板の傷んだ部分を切除したり、縫合したりします。切除した場合は術後数日程度の入院です。縫合した場合は術後1週間ほど入院し、2週間は膝の曲げを制限します。

前十字靱帯断裂に対する鏡視下手術(前十字靱帯再建術)

膝関節内には主要な靭帯が2本あり、十字靱帯と呼ばれています。このうち前十字靱帯はスポーツの着地で膝を内側にひねることで断裂することが多く、特に女子のバスケットボール選手に多く発生します。断裂すると膝が不安定となり膝折れが起こります。長期間放置すると半月板損傷や変形性関節症が起こりやすくなります。この靭帯は断裂したときに縫合しても治りにくいため、代わりの組織を使って靭帯をつくり移植して再建する必要があり、大腿部の後ろのハムストリングという筋肉の腱を用いて靭帯をつくります。術後は1週間ほど入院し、数ヶ月間は膝装具を使用します。

変形性肘関節症に対する鏡視下手術(関節形成術)

昔の骨折や野球などのスポーツにより骨にとげ(骨棘といいます)ができて関節が硬くなったり、軟骨がすり減り関節ねずみができて痛みが出たりします。骨棘を削り、関節ねずみを摘出します。

資格・認定

メンバー紹介

● 医師1名 アドバイザー5名
● 理学療法士2名
● 診療放射線技師1名
● 臨床工学技士1名
● 臨床検査技師1名
● 手術室担当看護師1名
● 外来担当看護師2名 アドバイザー1名
● 病棟担当看護師2名 アドバイザー1名
● 担当医療事務1名

● アドバイザー医師
名古屋スポーツクリニック 杉本勝正院長
名古屋市立大学整形外科 野崎正浩助教

● 顧問
名古屋市立大学 松井宣夫名誉教授

上記医師と連携し、治療にあたっています。

多血小板血漿(Platelet-rich plasma:PRP)療法とは?

患者さん自身の血液から、血小板濃度を通常の血液の約3~7倍に濃縮した「多血小板血漿(PRP)」を作製し、これを患部に注射する治療法です。血小板には血液を固める働きの他に組織を治癒させる指令を出す働きもあります。血小板からは成長因子と呼ばれる物質が放出され、それらが組織治癒を促進します。患者様自身の血液から作成するため、肝炎などのウイルス感染の危険性がなく、人工的な化学物質や自己由来以外の蛋白質を含まないためアレルギー反応を起こすこともなく安全です。ただし、どんな治療法も万能というわけではありませんのでたとえ適応疾患であってもPRP治療でも効果が得られない場合はあります。

PRP治療の対象となる疾患

テニス肘、ゴルフ肘(肘外側・内側上顆炎)や、ジャンパーズニー(膝蓋腱炎)、アキレス腱炎などの腱や靭帯の慢性化した痛みの治療のほか、肉離れ、筋断裂、靭帯損傷などのケガ、外傷の治療期間を短縮できると考えられています。整形外科領域ではこの治療法は海外では10年以上の実績があり、スポーツ選手を中心に行われています。 2014年にニューヨークヤンキースの田中将大投手が肘内側側副靭帯損傷に対してPRPによる治療を受たことが話題となりました。なお、当院では変形性関節症、膝半月板損傷などに対するPRPの関節注射は行っておりません。

そのほかの治療法について

PRP療法はあくまでも局所治療です。慢性のスポーツ障害に伴う痛みは、「筋肉のバランスの乱れ」、「体のかたさ」などの問題により局所に負担がかかり発生していることが多くみられます。これらの問題があれば、運動療法(リハビリ)が必要と考えられます。筋骨格系の疾患にPRP治療が有効とはいえ、基本的な治療を行わずにトライするのは得策とはいえません。まずは前述のリハビリやステロイド注射などの一般的な治療方法をひと通り行いましょう。それでも効果が不十分な方あるいは早く治したいという方は医師の判断と患者さんの希望によってPRP治療を行います。

受診までの流れ
  1. ご紹介の医師から当院の病診連携室を通して予約をして頂きます。ご自身で予約される方は電話で受診の予約をしていただきます(関節鏡・スポーツ整形外科センター:月曜日14時30分~15時30分、火曜日9時~10時)。
  2. MRIなどの患部の画像検査(CD-Rデータなど)をお持ちの場合は持参をお願いします。
  3. 受診の日は事務手続きなどありますので予約時間より30分ほど早めの来院をお願いします。
当院での治療の流れ

治療の事前準備として問診、血液検査、患部のエコー検査を行います(重篤な肝機能障害や、血小板数が極めて少ない場合は効果が期待できません。重篤な全身疾患がある場合、内服中の薬の種類によっては実施できません。)問診、血液検査で問題がなく、治療に同意されればPRP治療を行います。PRP治療の具体的な手順は以下の通りです。

  1. 一般的な採血のように末梢血を採取します(事前準備の血液検査を行った日と同じ日にPRP治療も行う場合は2回目の採血をさせていただくことになります)。
  2. それを遠心分離機にかけPRPを抽出します。
  3. 最後にPRPを患部に注入します。正確に注入するためにエコーで患部と注射の針を確認しながらPRPの注入を行ないます。
  4. 初回注射後、3~4週間経過し、痛みが軽減したものの痛みが残存している場合は、ご希望があれば、2回目のPRP注射を行います。一般的には3回前後のPRP注射を要することが多いようですが、1回の注射で症状が消失することもあります。
注意点

採血時と患部への注入時には、ある程度の痛みを伴います。またPRP注入後2週間ほどは炎症により痛みが続く場合がありますが、組織治癒のために炎症は必要な過程であり、特に心配はありません。これまでの報告によると治療効果には個人差や注射する場所による差があります。注射後は注射したPRPの拡散を防ぐため、約1時間の患部の安静と注射当日のみ水に濡らさないこと、その後の患部のマッサージ禁止と禁酒禁煙をお願いしています。治療効果が減弱または消失する可能性があるため、PRP療法実施2週間前からはロキソニンやボルタレンといった痛み止め、またはこれらの成分が含まれた湿布は使用しないで下さい。アセトアミノフェンという痛み止めは使用可能です。また患部へのステロイド注射も行えません(術前は最低1ヶ月の休止期間が必要)。抗凝固薬、抗血小板薬は施術前1週間中止が必要です。

以下の方は行うことができません
  • 妊娠中の方
  • 小児(12歳以下)
  • 発熱のある方
また以下の病気がある方は行うことができません
  • 出血傾向
  • 骨髄機能低下
  • 肝機能障害(慢性肝炎・肝硬変)
  • 悪性腫瘍(白血病を含む全ての悪性腫瘍)
  • HIV感染症
  • ウィルス性疾患(麻疹、伝染性単核球症、インフルエンザなど)
  • 高度の貧血
  • 膠原病(関節リウマチ、SLE、皮膚筋炎、バセドー病など)
  • 甲状腺機能異常
  • (特発性)血小板減少性紫斑病
  • 血小板増多症
  • 血小板無力症
  • 脾機能亢進症
  • (特発性)門脈圧亢進症
  • 遺伝性球状赤血球症
  • 自己免疫性溶血性貧血症
費用について

PRP療法は保険診療の対象外のため、一般の健康保険を使用することはできません。 PRP療法が開始になった場合は、それ以降の同一疾患の診療については全額自費診療となります。税別で初診時に9,000円、注射1回について20,000円、注射後の経過観察に6,000円かかります。初診の日にPRP注射も行う場合は29,000円かかり、2回目以降の注射は26,000円かかります。(税別)
※PRP作製用キットの価格が10,000円値上がりしたため、2020年3月1日より注射1回について、30,000円に変更となります。

診察日時

関節鏡・スポーツ整形外科センターは完全予約制です。

診療日火曜日
受付時間9:00~11:30
医師土屋 篤志
整形外科外来D22診察室にて

受診希望の患者さんは、当院の関節鏡・スポーツ整形外科センターへご連絡ください。
ご紹介を希望される患者さんは、かかりつけ医より当院地域医療連携室を通じてご予約ください。

関節鏡・スポーツ整形外科センター
または整形外科
TEL. 052-551-6121

よくある質問

QPRP療法で注射後は痛くなりますか?対処法は?
APRP療法による注射後に、腫れと痛みが出る場合があります。注射により一時的に炎症が起こることが治癒過程で必要なため、ロキソニンやボルタレンなどの非ステロイド性消炎鎮痛剤と呼ばれる痛み止めは使用できません。アインシングやアセトアミノフェンの内服は可能です。
Qアレルギー反応ってあるの?
APRP自体は、患者さん本人の血液成分なので、アレルギー反応を起こすことは考えられません。ただし局所麻酔剤や、消毒液によりアレルギー反応を起こすことは考えられます。
Q神経損傷があると聞きましたが本当ですか?
A注射という侵襲のある行為を行う上では、交感神経障害による複合性局所疼痛症候群(CRPS)という慢性疼痛が起こることがあります。ただし、本疾患はPRP注射に特有の問題ではなく、すべての注射、時には打撲によっても起こりえる問題です。
Qドーピング検査でひっかかりますか?
A問題になりません。以前までは禁止されていましたが世界アンチドーピング機構では腱付着部への投与だけでなく、筋肉内投与も認められ、肉離れなどにも問題なく用いられるようになりました。