部門・センター

肝臓疾患センター

概要・特色

肝臓疾患センターでは、消化器内科と消化器外科が協調して、ほぼすべての肝臓の病気とその合併症の診断と治療を行っています。肝臓を含む消化器の病気では、画像診断が重要となりますが、当院では高性能の内視鏡、CT、MRI、血管造影装置、超音波画像診断装置を備え、複雑な病態や微細な病変まで正確に診断することを心がけています。また、治療ではカテーテルを用いた最新の治療から体への負担の少ない内視鏡手術まで、患者さんの病状に適した治療を提供することができます。

肝臓疾患センターのご紹介

最近、生活環境の変化や医学の進歩によって、肝臓の病気の特徴がしだいに変わってきています。ウイルスが原因の肝炎の大部分が、薬によって治るようになりました。また、以前はさほど注目されていなかったいわゆる「脂肪肝」が注目されています。なかでも、NASHと呼ばれる非アルコール性脂肪性肝炎は、肝硬変から肝がんに進展する病気で、その重要性が認識されています。
一方、従来から肝臓の専門家が重視してきた、肝硬変とその合併症である難治性腹水や食道静脈瘤・胃静脈瘤、さらに、肝臓がんなどの悪性腫瘍の診断と治療の重要性も低下するものではありません。むしろ、これらの病気の治療も同様に進歩しており、治療成績もさらに向上しています。
名鉄病院では、肝臓病の患者さんに対して、肝臓内科専門医、肝臓外科専門医、内視鏡専門医が協力して、おひとりおひとりに最適な治療を行っています。また、すべての領域に言えることですが、医師だけでなく、看護師、栄養士、薬剤師、理学療法士がチームとなって皆様の治療を支えますので、安心して当センターにご相談いただければと思います。

診療内容

脂肪肝(NAFLD/NASH)(図1)

飲酒などの生活習慣、生活習慣病罹患の有無、内服薬の内容などを確認し、血液検査や画像診断の結果を参考にして診断します。この内、進行性の病気である、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の可能性がある場合は、入院して肝臓の組織の一部を採取して調べます。
治療は生活習慣の改善、原疾患の治療、内服薬の投与などが主体になります。

ウイルス性肝炎

慢性化しやすいウイルスはB型とC型肝炎ウイルスです。これらのウイルスに感染して不幸にも慢性化し、その後治療を受けなかったり治療が有効ではなかったりすると次第に肝臓が侵されて、肝硬変になります。この状態が続くと肝がんを発症する人が出てきます(図2)。たとえばC型の肝硬変の患者さんでは年7%程度の発がん率という報告もあります。
現在では、B型肝炎のワクチンやガンマグロブリンといった薬があり、新たにB型肝炎に感染する人はごくわずかになっています。また、慢性化してしまった患者さんであっても、薬の投与によってウイルスの勢いを抑えて病状の進行を遅らせることができるようになっています。
C型肝炎の治療はこの数年で劇的に進歩しており、かつてのように副作用の強いインターフェロンを使用することはほぼなくなりました。現在は安全性の高い内服薬が発売されており、大半の患者さんはこれによってウイルスを排除することができるようになりました。
ウイルス性肝炎・肝硬変で悩まれている患者さんはこの機会に是非治療を受けてみませんか。

肝硬変の合併症
腹水

慢性肝炎が長期間持続すると肝硬変になります。肝硬変になるとさまざまな合併症をきたします。腹水の貯留もそのひとつです。肝硬変になると肝機能が著しく低下し、この結果アルブミンという血液中の大切なタンパクが減少して、血液の浸透圧が低下することが原因のひとつです。また、肝臓が固くなることによって、腹部の門脈という血管の内圧が上昇し、水が腹腔内に染み出しやすくなるのも原因のひとつです。
少量の腹水は、食生活など生活習慣の改善や利尿剤の内服で消失します。大量の腹水は治療が難しく、場合によっては入院で「腹水濾過濃縮再注入(CART)」が必要になることがあります。

食道・胃静脈瘤

食道・胃静脈瘤は胃や食道にできる静脈のコブのことです。ここからの出血は命にかかわる危険な状態です(図3)。この治療は主に胃カメラを使って行います。食道静脈瘤では静脈瘤を輪ゴムで縛る方法(図4)が主に用いられます。胃静脈瘤では、胃カメラで静脈瘤に硬化剤という薬剤を注入する方法が用いられますが、治療が困難な場合は、カテーテルを用いて静脈瘤を硬化する「バルーン下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)」(図5)も行います。それでも十分な治療ができない場合は、手術で胃と食道の周りの血管を切り取る手術(ハッサブ手術、食道離断術)を行います(図6)。

肝腫瘍

肝臓にできる腫瘍には悪性なものと良性なものがあります。悪性の腫瘍の中には肝臓にもともとできた肝がん(原発がん)と大腸など他の臓器にできたがんが肝臓に転移してきた転移性腫瘍があります。肝がんの大部分は肝細胞がんと呼ばれるがんです(図7)。

肝がんの治療

当院では、(1) 腫瘍に針を刺して焼く治療であるラジオ波焼灼療法(RFA)、(2) 細いカテーテルを血管の中に進めて腫瘍に入る血管を詰めてしまう肝動脈塞栓化学術(TACE)、(3) 病変部分を取り除く肝切除術のすべてを行っています。
特に肝切除では、腹腔鏡という内視鏡をもちいた体への負担が少ない方法を取り入れて積極的に行っています(図8)。

この手術は、この地区でも限られた施設しか行っていません。
当院の肝臓外科担当者が過去に行った手術の成績では、肝癌研究会がまとめた全国主要病院の平均と同等かそれ以上の成績を収めています(図9)。